【書評】『思考の整理学』感想|“考えすぎ”な私が「待つ」ことを覚えた話

翻訳

「また、考えすぎてる…」

本屋さんをぶらぶらしていた時、ふと目に入った『思考の整理学』という一冊。
これまでも何度か見かけていたはずなのに、その日はなぜか、強く惹きつけられました。

「思考の整理…? なんか今の自分に必要そう」

ぐるぐる考え込んで、気づけば何も進んでいない。
そんな私の“ぐちゃぐちゃ”な頭の中に、この本が少しでもヒントをくれるかもしれない。

そんな直感を信じて、ページをめくり始めました。

この記事では、かつての私と同じように「考えすぎて動けない」と悩むあなたが、少しだけ肩の荷を下ろし、自分の思考と上手に向き合うためのヒントをご紹介します。

目次

『思考の整理学』とは?長年愛される思考術のバイブル

まず、この本について簡単にご紹介します。

『思考の整理学』は、英文学者であり、評論家でもあった外山滋比古(とやま しげひこ)氏によって書かれ、1986年の刊行以来、今もなお多くの人に読み継がれている思考術に関する名著です。

単なるノウハウ本ではなく、知的な生産活動を行うすべての人に向けた、普遍的なヒントが詰まっています


新版 思考の整理学 (ちくま文庫)

【要約】私の心に響いた3つの教え

数々の教えの中で、特に私の心に深く響き、思考への構え方を変えてくれた3つのエッセンスをご紹介します。

① 自力で飛ぶための「飛行機型」思考

本の中で語られる、「グライダー型」と「飛行機型」というたとえ話が、私の心に突き刺さりました。

  • グライダー型: 誰かに引っ張ってもらわないと飛べない。知識を受け取るだけの思考。
  • 飛行機型: 自分のエンジンで、自力で飛び立てる。知識を元に、自分で考える思考。

私はもともと、誰かに「こうして」と指示されるより、自分のペースや感覚で動きたいタイプ。
だからこそ、「自分の中にあるエンジンで考える」というこのたとえに、静かに背中を押されたのです。

「こう考えるべき」という他人のレールではなく、自分の力で思考の空を飛ぶ。
そのためのエンジンを、誰もが持っているんだと気づかされました。

② 答えを急がない「寝かせる」という選択肢

この本が、私にくれた最大のギフト。
それが、「思考を寝かせる」という選択肢でした。

考えることって、真剣になればなるほど重くなり、自分を追い詰めてしまいがちです。
でも、すぐに答えを出さなくていい。

「寝かせる」とは、思考を手放すことではありません。
頭の片隅に置いて、意識しすぎず、ただ時間をあげる感覚。

そうすることで、思考に呼吸が生まれます。

焦って追いかけていた時には見えなかった景色が、ある日ふっと、向こうからやってくる。
「考えすぎずに待つ」ことも、大切な思考の一部なのだと知りました。

③ 「知っている」から「使っている」への橋渡し

本を読んでいて、ハッとしたこと。
それは、「知識を知っている」ことと、「それを使えている」ことは全く違うということです。

これまでの私は、たくさんの本を読み、「読んだこと」で満足していました。
知識を集めることに夢中で、それがまだ自分の血肉になっていなかったのです。

“知っている”と“考えている”の間には、行動や実感という橋があります。

その橋を自分の足で渡って初めて、借り物ではない、自分の言葉や思考が生まれる。
この本は、その当たり前で、でも一番大切なことを思い出させてくれました。

なぜ、本からの学びが心地よいのか

私は、誰かに直接教わることよりも、本から知ることの方がずっと好きです。

なぜなら、そこには「自由」があるから。

読むのも、読まないのも、自分で決められる。
タイミングも、読み方も、受け取り方も、すべてが自由です。

人から直接教わると、その場の空気や相手の感情、時にはプレッシャーが入り混じり、自分の思考がねじれてしまうことがあります。

その点、本はいつも静かで、対等です。
こちらがページを開くその時を、ただ待っていてくれる。
必要な時に、必要なだけ、深く語りかけてくれる存在なのです。

「待つ」という、能動的な行為

思考を寝かせるということは、ただの「待ち」ではありません。
それは、「今じゃない」と主体的に選び取る、能動的な行為です。

すぐに決断して動く瞬発力も大事。
でも、じっくりと待つことでしか熟成されない思考もある。

自分の内側から答えが生まれてくるタイミングを、急かさずに信じてあげる。
その静かな時間は、決して無駄な停滞ではなく、次へ飛ぶための大切な滑走路上なのです。

まとめ|あなたの“ぐるぐる思考”に、一息つく許可を

『思考の整理学』を読んでから、考えることへの構え方が、少し変わりました。

ちゃんと考えたい。
でも、すぐに言葉にしなくてもいい。
まとまらなくても、心の中で揺れていても、それも立派な「考えている」途中。

焦らず、でも思考を止めずに。
自分のタイミングで、自分の言葉が生まれるのを待ってあげる。

もしあなたが今、「考えすぎ」て苦しいのなら、この本はきっと、「無理に答えを出さなくてもいいんだよ」と、あなたに優しく語りかけてくれるはずです。

ぐるぐる回る思考に、一息つく許可を出す。
そのための「処方箋」として、ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。


ワイド新版 思考の整理学 (単行本 –)

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