世間では、絶賛されている映画『8番出口』。
確かに、ゲームに参加しているような「体験」は、新しかった。
でも、どうしても、私の心は、最後まで動かなかった。
この記事は、「面白かった!」という大きな声の裏で、私と同じように、小さな「違和感」を抱えた、あなたのために書きました。
なぜ、私はこの映画を、100%楽しむことができなかったのか。その理由を、ネタバレありで、正直に、語っていきます。


8番出口 川村元気 文庫 E
挑戦は素晴らしい。しかし…
まず、断っておきたいのは、私は、もともと限定された空間で、登場人物の心理がじわじわと追い詰められていくようなのような、ワンシチュエーション映画が大好きだということです。
だからこそ、この『8番出口』の「無限ループの地下通路から脱出する」という設定には、心の底からワクワクしていました。
そして、観客をイライラさせたり、不快にさせたりする演出も、おそらく監督が意図的に狙ったものなのでしょう。
その、作り手の挑戦と意図を、リスペクトした上で。
それでも、どうしても拭えなかった「違和感」があったのです。
違和感①:ゲームの「静かな恐怖」は、どこへ行った?
- まず、怖くなかった
私がこの映画の「設定」から期待していたのは、じっとりとした、日常が少しずつ侵食されていくような、静かな恐怖でした。しかし、実際に映画で描かれていたのは、それとは少し違う、もっと直接的なパニック描写が中心だったように感じます。 - 主人公の、過剰な感情表現
二宮和也さん演じる主人公の演技が、時に、不自然なほど大袈裟に感じられました。
「そこまで、感情的になることかな?」と、彼のパニックや絶望に、最後まで共感しきれない自分がいました。
違和感②【ネタバレ】:取ってつけたような「深み」と、成長物語
(※ここから先は、物語の核心に触れる、重大なネタバレを含みます)
私が、最も「刺さらなかった」のが、この映画の”結論”です。
相手に子供ができた、という設定。
それによって、主人公に父親になる自覚が芽生え、人間的に成長する…という物語。
正直に言って、あまりにも「取ってつけた」ように感じてしまいました。
まだ生まれてもいない命のために、そこまで劇的に人が変われるものだろうか。
ゲームの持つ、もっと理不尽で、クールな恐怖の世界観が、急に、安っぽいヒューマンドラマに着地してしまったような、そんな感覚でした。
結局のところ、私がこの映画に「刺さらなかった」最大の理由は、これに尽きます。
設定は最高だったけれど、描かれていた内容は、あまりにも「簡単」に感じてしまったのです。
もっと、人間の、ドロドロとした、答えの出ない何かが見られると、期待していたのかもしれません。
【処方箋】この記事を、こんなあなたに届けたい
- ゲーム版『8番出口』の、あのクールな空気感が、大好きなあなたへ
- 映画を観て、私と同じように「あれ?」という違和感を、感じたあなたへ
- 絶賛レビューだけでなく、正直な批評も読んでみたい、すべての映画ファンへ
もちろん、これは、あくまで私個人の感想です。
あなたはどう感じたでしょうか。
P.S. もし、あなたがこの物語の、クールで、じっとりとした恐怖の”本質”を味わいたいのであれば。 私は、まず、原作であるゲーム版を、強くおすすめします。
▶︎ Steam『8番出口』販売ページ: こちら


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