【感想】『岸辺露伴は動かない』原作漫画レビュー|ドラマからハマった私が語る3つの魅力

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本棚に並ぶのは、活字が中心の小説や歴史、エッセイなど。
普段、マンガというものには、ほとんど縁がありませんでした。

そんな私が、生まれて初めて「この人のマンガが欲しい」と強く思い、書店に走った作品があります。

それが、荒木飛呂彦先生の『岸辺露伴は動かない』です。

きっかけは、Netflixで見た高橋一生さん主演の実写ドラマでした。
何気なく観始めたそのドラマは、私の心を鷲掴みにしました。

なんてことない日常が、背筋の凍るような非日常へと反転する、謎めいた世界観。
そして何より、主人公・岸辺露伴の揺るぎない品格と、独自の美意識。

「この感覚、もっと深く味わいたい…!」

その一心で原作マンガを手に取った今、ドラマからこの世界に入って本当に良かったと心から感じています。

この記事では、かつての私と同じように、
「ドラマは観たけど、原作はどうなんだろう?」
「マンガは普段読まないけど、少し気になる…」
というあなたへ向けて、『岸辺露伴は動かない』が持つ抗いがたい魅力をご紹介します。

目次

『岸辺露伴は動かない』とは? ジョジョを知らなくても楽しめる極上の短編集

『岸辺露伴は動かない』は、大人気マンガ『ジョジョの奇妙な冒険』のスピンオフ作品です。
しかし、「ジョジョ」本編を全く知らなくても、全く問題なく楽しめます。

主人公は、『ジョジョ』シリーズに登場する天才マンガ家・岸辺露伴。
彼が取材先などで遭遇する、奇妙で恐ろしい出来事を描いたホラー・サスペンス風の短編集です。

本作の大きな特徴は、スタンド(超能力)同士の派手なバトルではなく、じっとりとした日本の習俗的な恐怖や、人間の心理に潜む謎に焦点が当てられていること。
まさに「大人が楽しめる、世にも奇妙な物語」といった趣の作品なのです。

ドラマファンが震えた、原作漫画ならではの3つの魅力

マンガを読んで、ドラマがいかに原作の神髄をリスペクトし、見事に表現していたかを改めて痛感しました。
その中でも、特に心を掴まれた魅力を3つ、ご紹介します。

魅力① 岸辺露伴の「品格」:高橋一生は完璧な実写化だった美学」

高橋一生さんが見事に体現していた、あの岸辺露伴というキャラクター。
マンガの彼は、その魅力がさらに凝縮されています。

彼は決して、いわゆる「良い人」ではありません。
自己中心的で、マンガのリアリティのためなら他人の迷惑を顧みない、唯我独尊の人物です。

しかし、彼の行動には一本、筋が通っています。
それは「マンガ家としての矜持」と「自らの美学」。

「この岸辺露伴が金やちやほやされるためにマンガを描いてると思っていたのかァーッ!!」

この有名なセリフに象徴されるように、彼は自らの仕事に絶対の誇りを持っています。
そのブレない姿勢、美しい立ち居振る舞い、一切の妥協を許さない美意識。
そのすべてが「品格」となり、私たちは風変わりな彼から目が離せなくなる
のです。

魅力② 日常と隣り合わせの「奇妙な恐怖」

この物語の怖さは、お化け屋敷のような分かりやすい恐怖ではありません。

ふと迷い込んだ村の「奇妙なマナー」 (『富豪村』)。
絶対に背中を見せてはいけない男との「奇妙なゲーム」 (『背中の正面』)。
走り続けることに取り憑かれた男の「奇妙な執念」 (『ザ・ラン』)。

すぐそこにある日常が、ほんの少しのきっかけで、恐ろしい世界へと反転してしまう。
その「ありえるかもしれない」というリアリティが、背筋をゾッとさせるのです。
ドラマで感じたあのじっとりとした空気感は、原作の持つ独特の魅力を完璧に捉えていたのです。

魅力③ 荒木飛呂彦の「画力」:ページをめくる美術館

そして何より、マンガを読んで衝撃を受けたのが、荒木飛呂彦先生の画力です。
一枚一枚のページが、もはや「マンガ」というより「芸術作品」。

人体の筋肉の躍動感、美しいファッション、緻密に計算された構図とコマ割り。
キャラクターたちのポージングは、まるでギリシャ彫刻のように気高く、美しい。

ドラマで高橋一生さんが見せた、あの独特の美しい立ち姿は、まさに荒木先生の描く岸辺露伴そのものだったのだと、深く納得しました。
この「美」を浴びるだけでも、マンガを読む価値は十分にあります。

【処方箋】日常に「知的な刺激」を求める、あなたへ

『岸辺露伴は動かない』は、ただのマンガではありません。
それは、日常に潜む謎と美を発見するための「解像度を上げてくれる」ような作品です。

  • ありきたりの物語に、少し退屈しているあなたへ
  • 確固たる「美学」を持つ人物に、憧れを抱くあなたへ
  • 日常の中に、ドラマティックな刺激や知的興奮を求めているあなたへ

この作品は、あなたの知的好奇心を間違いなく満してくれます。
もし、ドラマを観て少しでも心が動いたのなら、ぜひ原作のマンガを手に取ってみてください。

そこには、あなたの知らない、さらに深く、美しく、そして奇妙な世界が広がっているはずです。

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