『ワンルームワンダーランド』感想|一人暮らしの“寂しさ”も“自由”も、全部が愛おしくなる本

翻訳

一人暮らしを始めて、他の人の暮らしが、ふと気になった。

みんな、どんな部屋で、どんなことを考えて、毎日を生きているんだろう?
そんな素朴な好奇心から、私は一冊の本を手に取りました。
それが『ワンルームワンダーランド』です。


ワンルームワンダーランド ひとり暮らし100人の生活 [ 落合 加依子、佐藤 友理 ]


100人分の、100通りの「ひとり暮らし」の記録。
ページをめくるたびに、そこに写る見知らぬ誰かの部屋が、不思議と自分自身の物語のように、静かに心に響いてきました。

目次

100人分の「暮らしの営み」が詰まった一冊

『ワンルームワンダーランド』は、職業も住む場所もさまざまな100人の、ひとり暮らしの部屋にまつわるエッセイと写真を集めた、オールカラーの記録集です。

そこには、お笑い芸人、喫茶店店主、会社員、医師、花屋…といった、市井に生きる人々の、ありのままの暮らしが写し出されています。

本書の「はじめに」には、こうあります。

「部屋は、言葉を話すわけじゃない。でもありったけの息を吸って暮らすわたしたちを、静かに見守ったり叱ったりしているのかもしれない」

この一文こそが、この本のすべてを物語っているのかもしれません。

部屋が映し出す、孤独と自由の物語

インドアな私にとって、部屋での居心地は、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)を左右する、非常に重要な要素です。

実家暮らしの頃、私が本当に“一人”になれたのは、家族が寝静まった夜中だけでした。
常に誰かの気配を感じる安心感と、息苦しさが同居していたあの部屋。
それに比べて、今の部屋は、時に孤独を感じるけれど、360度どこを見渡しても、そこは紛れもなく“私”だけの空間です。

「孤独ではあるけれど、最高だ」

最近、そう感じることが多くなりました。
この本に登場する100人の部屋もまた、それぞれの孤独と自由を抱きしめた、愛おしい城なのだと感じました。

100の部屋の中で、私が特に心惹かれたのは、学生のほりかなはさんが書かれた「ホームアローン」という一編でした。
なぜなら、その暮らしぶりが、不思議と今の私自身の状況と重なって見えたからです。

そして、この本を読んだことで、私は自分自身の暮らしの中にある「小さな幸せ」に、改めて気づかされました。

私の部屋は隣人に恵まれていて、とても静かなんです。
朝7時頃に聞こえてくる隣の部屋の洗濯機の音。
それは私にとって、決して騒音ではありません。
むしろ、「ああ、朝が来たな。私も一日を始めよう」と思わせてくれる、心地よい生活の合図になっています。

本の中の誰かの暮らしに触れることで、自分の日常にある、当たり前だと思っていた穏やかな刺激や、人との静かな繋がりを再発見できる。これこそが、この本の持つ魔法なのかもしれません。

この本を「処方箋」として渡したい人

もしあなたが、一人暮らしの静寂に、ふと寂しさを感じているなら。
あるいは、これから始まる一人暮らしに、少しだけ不安を抱いているなら。

この本は、「大丈夫、あなただけじゃないよ」と、100通りの声で、そっとあなたを励ましてくれます。
ページをめくれば、そこにいるのは、あなたと同じように悩み、笑い、生きる、等身大の隣人たちです。

おわりに

「ワンルーム」という、小さな宇宙。
でも、その小さな部屋から、私たちの人生という、無限の物語(ワンダーランド)は広がっていく。

この本を読み終えて、私は自分の部屋が、昨日よりも少しだけ愛おしくなりました。

あなたも、まずは自分の部屋を見回して、「一番好きな場所」を探してみませんか?
きっと、あなただけの“ワンダーランド”が、そこにあるはずです。はずです。

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