【続編】境界線のその先 ―― 8ヶ月の沈黙を経て、私は「召喚」のボタンを押した

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はじめに この記事は、以前書いた「友人と話が合わなくなった?その違和感の正体は、、、」の続編です。

あの時、長年の友人との間に静かな境界線を引いた私が、その後どう過ごし、なぜ今、再び彼女に連絡をしたのか。その空白の8ヶ月間と、再会の記録を綴ります。


目次

崩れ落ちる前に、私は走り続けていた

「お会計は、別々で」 あの日、自分で引いた一本の境界線。
引っ越しをして約10か月。生活が落ち着いた頃に彼女と会って、静かに閉じた。

その頃の私は、自分でも気づかないうちに、限界を超えていた。

当時私は、大切な人を亡くした悲しみに蓋をし、それを忘れるように引っ越しをして環境を一新。
先輩の突然の解雇、その責任が私にのしかかり一人で背負い込んでた。
「自分は強い人間だ」と言い聞かせ、走り続けていた。
表面上は完璧にこなしているつもりでも、心は音を立てずに壊れかけていたのが今なら分かる。
本能で感じていた現実逃避。
引っ越しは、そんな自分を守るための、たった一つのリセット手段だったのだろう。

必要な孤独、8ヶ月の空白

彼女と連絡を絶って約8ヶ月、私は意識的に人との距離を置いた。

ただひたすら、私は自分と向き合った。
朝、目が覚める、カーテンを開ける。
光が、まっさらな床に落ちる。

何も考えない時間。
何もしなくていい時間。
誰かに合わせなくていい時間。

その静けさの中で、私は少しずつ、自分の中に溜まっていたものに気づき始めた。

今までの自分を見直し、再構築する作業には膨大なエネルギーが必要だ。
私はそのために、あえて孤独を自ら選んだ。

「強くなければならない」と、自分を縛り続けてきた重圧。
誰かの期待に応えることばかり考えて、自分の心の声を無視してきた日々。
それらがすべて、重い荷物のように、私の肩に乗っていた。
けれど私は、その重さにさえ、気づいていなかったのだ。

もちろん、この期間も完全に誰とも会わなかったわけではない。
正月には、実家に顔を出した。
本当は家族と会うことさえ迷っていたのだけれど、私の迷いを察した母が「正月くらい帰っておいで」と背中を押してくれた。

けれど、友人だけは別だった。
彼女と連絡を取ることは、まだ自分には早い。
今繋がってしまったら、一人で積み上げてきたものがすべて崩れてしまう。
そんな予感があった。

寂しさが追いついてきた頃

変化が訪れたのは、昨年の年末あたりだった。
それまで心地よかった孤独が、少しずつ、寂しさに変わり始めた。

ふとした瞬間に、寂しさがじわじわと襲ってくるようになった。
それでも、「今はまだ、誰かに甘えてはいけない」と自分を律し続けた。
まだ自分の核が固まりきっていない私は、その揺らぎを飲み込んで耐えた。

変化は、1月に入って実家から一人の家に戻ったときに、唐突に訪れた。

「あ、今だ。彼女に連絡を取ろう」

そのタイミングは、あまりにも急に、けれど確信を持ってやってきた。
今の自分なら、もうブレない。そう思えた勢いのまま、私は彼女に電話をかけた。

連絡不精な彼女の、初めての言葉

彼女が電話に出た時、私は朝から泣いていた。
仕事の疲れが、限界に達していた。

減らない業務。それはどんどん増え続けていた。
また新しい責任が、私を待っていた。

「ごめん、連絡取れなくて。久しぶり」
久しぶりの彼女の声は明るかった。

彼女は筋金入りの連絡不精で、そんな風に謝るようなタイプではない。
「ごめん」なんて言葉、初めて言われたと言っても過言ではない。
その一言だけで、彼女がこの8ヶ月間、私の沈黙を気にかけてくれていたことが分かった。

最初は、当たり障りのない会話。
けれど、次第に、昔のような空気に戻っていった。
あの日感じていた妙な緊張感は、もうどこにもなかった。

私は素直に、ここ数ヶ月のことを話した。
昔のように、ただ笑い合っている自分がいた。

「連絡しなくて、ごめん」

電話の後、しばらくして私たちは夜ご飯を食べに行くことになった。
実際に顔を合わせた彼女は、開口一番にこう言った。

「私の方から連絡しなくて。ずっと気になってたんだけど……なんか、今は連絡しない方がいいのかなって思って」

彼女は、私の連絡がパタリと途絶えたことを、私の「意思」として受け止めてくれていた。
どう連絡すべきか迷いながら、それでも私の時間を壊さないように、静かに待っていてくれたのだ。

不調の渦中にいるときは、それが「異常」だとは思わない。
周りに言われて初めて「私、おかしいのかも」と気づくけれど、気づいたからといってすぐに元には戻れない。
あの8ヶ月の沈黙は、彼女との関係を壊すためのものではなく、私が私を解体して、再構築するためにどうしても必要な「空白」だった。

境界線の向こう側で

一度離れたことで、私たちは以前よりもずっと純粋な「友人」に戻れた気がする。
あの日、お会計を別々にしたことで生まれた対等な距離感。
それが、お互いの人生を尊重し合いながら再び手を繋ぐための、心地よい余白になっていた。

沈黙の時間は、無駄ではなかった。
私は私の道を、彼女は彼女の道を歩きながら、またこうして時々声を掛け合えばいい。
久しぶりに会った彼女と笑い合った夜の空気は、以前よりもずっと、涼やかで心地よかった。

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