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益田ミリ『週末、森で』|仕事がしんどかった時は、森の中に逃げる

翻訳

仕事で新しいポジションを任されて、
本当に初めてのことばかりで、
日々、確実に疲れていた。

毎日がなんとなく重たくて、
夜になると「もう全部いやだな」って心の中で思っていた。
大きな出来事があったわけじゃない。
でも、毎日ちょっとずつ“自分が減っていく”ような感覚が、ずっと続いていた。

そんなある日、駅ビルの本屋をぼんやり歩いていて、
ふと目に入ったのがこの本だった。

益田ミリ『週末、森で』

なんとなく目が留まって、手に取って、表紙を眺めて、
そのままレジへ持っていった。
迷いもなく、というより、もう考える余裕もなく。
いま思えば、“選んだ”というより、“救われに行った”んだと思う。


目次

森に逃げたくなったとき、そっと入れる場所があった

この本に出てくるのは、
森の近くに住む早川さんの家に、週末ごとに集まるマユミちゃんとせっちゃんの3人
それぞれに疲れや違和感を抱えながら、
でもそれをいちいち言語化するわけでもなく、
ただ一緒にごはんを食べたり、おしゃべりしたりして過ごす。

わたしはこの本に、逃げたんだと思う。
日々の責任や人間関係から少しだけ離れて、
森の家で、ちょっと良いお取り寄せグルメを楽しみながら癒されている3人の空気に、
自分の気持ちを重ねたくなった。

森にいるからって、食べ物までストイックにする必要なんてない。
おいしいものを食べて、なんでもない話をして、
それだけで心がほどけていくような時間が、この本の中にはあった。
その緩さに、ものすごく救われた。(病んでる笑)


日常の、小さな幸せに気づく感覚

この本の中では、特別なことは起きない。
でも、ページをめくるたびに、
日常のなかにある小さな幸せや、あたりまえのやさしさにふっと目が向くようになる。

朝ごはんを一緒に作ることとか、
ちょっと良いグラスでお酒を飲むこととか、
誰かの話にただ耳を傾けることとか。

それって、ちゃんと働いたり、なにかを成し遂げることとは別の場所にあるけれど、
それでも確かに「豊かさ」だと思えるものたち

この本を読んでいるあいだ、
「今あるもののなかにも、ちゃんと幸せはあったんだ」って、
少しだけ思い出せた気がした。


本のなかに、“寄り道”としての森がある

この本を読んだからといって、
仕事が急にうまくいくわけじゃなかったし、
しんどさがすっかり消えたわけでもない。

でも、気づいたら呼吸が少し深くなっていた。
何かを変える力じゃなく、一度立ち止まって深呼吸する余白をくれる一冊。


この本をすすめるというより、ここに置いておくような気持ちで

わたしは昔から、何かを「ぜひ読んでほしい」と思うことがあまりなくて。
いいなと思ったものほど、うまく言葉にできなくなる。
それをどう感じるかは、その人のタイミングや気分次第だから。

この本についても、特別におすすめするわけではない。
ただ、あのとき、わたしはこうして出会って、
少しだけ息がしやすくなった、ということを
ここに静かに置いておきたいと思った。

もし、何かに疲れてしまった誰かが、
この本のことをふと知って、
「今のわたしにはちょうどいいかも」と感じてくれることがあれば、
それだけで、たぶん、もうじゅうぶん。

まとめ|森で深呼吸するように、本を開くということ

人は、がんばらないときほど、
本当に必要なものが見えてくる気がする。

『週末、森で』は、
わたしにとってそんな“がんばらないとき”に、そばにいてくれた本だった。

本のページをめくるたび、
ちいさな森の空気が心の中にすこしずつ広がっていくような、
そんな読書時間だった。

この本が、わたしにとってそうだったように、
誰かにとっての“ちょうどいい寄り道”になりますように。

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