大人になればなるほど、新しく友達を作るのは難しくなっていく。
周りの状況はどんどん変わり、気づけば一人で過ごす時間が増えていた。
そんな時、ふと目にしたのが、映画『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』の予告編でした。
仕事で少し疲れていた私は、何かパワーチャージできるような、明るい気持ちになれる作品を求めていました。そして、この映画に何か惹かれるものを感じて、映画館へと足を運んだのです。
まさか、この映画が、私の「孤独」や「友情」についての考えを、こんなにも深く揺さぶることになるとは、思いもせずに──。
※大きなネタバレはありませんので、未見の方も安心してお読みください。
『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』のあらすじと豪華キャスト
原作は、世界的な文学賞にもノミネートされたパク・サンヨンのベストセラー小説。
自由奔放でエネルギッシュなジェヒ(キム・ゴウン)と、ゲイであることを隠し、穏やかに、しかし心に孤独を抱えて生きるフンス(ノ・サンヒョン)。正反対の二人が、ある出来事をきっかけに同居生活を始めるところから、物語は始まります。
『パラサイト 半地下の家族』のチャン・ヘジンや、『涙の女王』のクァク・ドンヨンなど、豪華な実力派キャストが演じることで、原作の持つ軽快な魅力と切実さが、より一層深みを増していました。
考察|この映画が描く「都会の孤独」と友情の形
この映画を観て、私が強く感じたのは、「この物語は、私たちの誰もが心の奥底で抱える『憧れ』を描いているのではないか」ということです。
人間は、本来誰もが孤独です。
陽気に見える人も、孤独を隠さない人も、心のどこかに、誰にも埋められない場所を抱えながら生きています。
同調圧力の中で、同じような人で集まっているように見えても、一人ひとりを見れば、同じ人間なんて一人もいない。その時々で、考え方だって変わっていく。
そんな、絶えず変化していく「違い」を丸ごと受け入れながら、それでも「一緒にいたい」と思える存在がいるということ。
それこそが、人生における最大の救いであり、最強の強さなのだと、この二人は教えてくれます。
わたしにとっての“静かなインプット”
この映画にこれほど惹かれた一番の理由は、主人公の一人、ジェヒが少しだけ私に似ていたからです。
あそこまで奔放ではないけれど、いつもどこか周りから浮いているような、一人だけ違う場所に立っているような感覚。
その彼女が、フンスという存在を得て、本来の自分でいられる場所を見つけていく姿に、私は自分を重ねていました。
そして、なぜなら。
私にも昔、ジェヒにとってのフンスのような、違いを認め合い、本来の自分でいられる、かけがえのない相手がいたからです。
今はもう会えないその人のことを、映画を観ながら、ずっと脳内でリプレイしていました。
だから、この二人の友情が、たまらなく愛おしく、そして少しだけ、悲しかった。
この作品は、そんな風に、私の心の柔い部分に、静かに触れてきたのです。
この作品を、あの人に渡すとしたら
もし、あなたが今、きらびやかな都会の真ん中で、ふと寂しさを感じていたり、誰かといても埋められない孤独を感じているとしたら。
私は、この作品をそっと置いてみたい、そんな風に思います。
ここには、「こう生きるべきだ」というメッセージはありません。
ただ、不器用に、でも必死に、自分だけの愛や友情の形を見つけようとする、愛すべき人々の姿があるだけです。
その姿はきっと、「一人でも大丈夫。でも、一人じゃないって、最高だ」と、あなたの心を温めてくれるはずです。
おわりに
『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』を観終えれば、いつもの見慣れた景色が、ほんの少しだけ違って見えるかもしれません。
私たちは、孤独と共に生まれ、孤独と共に生きていく。
でも、人生のある瞬間に、その孤独を分ち合える誰かと、奇跡のように出会うことがある。
この物語は、そんな人生の、ほろ苦くて、どうしようもなく愛おしい真実を、思い出させてくれました。
あなたの心にも、静かな灯りがともりますように。