『侍タイムスリッパー』―「どこで面白くなるんだろう」と待ち構えていた話

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「今年一番面白い邦画だよ」

映画好きの友人から、そう強く勧められた映画『侍タイムスリッパー』。正直に告白すると、私は最後までこの映画に「ハマる」ことができませんでした。

なぜだろう。面白いと聞いていたのに、どうして心が動かなかったんだろう。映画が面白くないというより、自分がどこか作品を待ち構えていた気がする。この記事は、その待ち構え方について、正直に書いてみたものです。

目次

長く感じた序盤と、一度止めた再生ボタン

物語は、現代にタイムスリップした侍たちが、現代文化に戸惑いながらも奮闘するというもの。ただ、序盤がなかなか動き出さず、気づけば私は一度、再生ボタンを止めていました。

作品の世界に引きずり込まれるより先に、「これから面白くなるんだろうか」という考えの方が先に立ってしまった。序盤で止めてしまったこと自体が、その時点でもう作品に入り込めていなかった証拠だと思います。

「どこで面白くなるんだろう」と待ち構えていた

観ながらずっと考えていたのは、「ここが評判のポイントなのか」「このあともっと面白くなるのか」ということでした。

友人の「今年一番」という言葉が、観る前からひとつの基準線を作っていました。その基準線を超えるかどうかを、無意識に測りながら座っている。まだハマっていない、まだハマっていない、と自分の状態を確かめるような見方になっていました。

何も知らずに観ていたら、序盤の長さも「まあこういう映画もあるよな」くらいで流せていたかもしれません。でも一度「今年一番」と聞いてしまうと、その言葉抜きで映画を観ることは、もうできませんでした。

評判を先に知ると、映画が”答え合わせ”になる

考えてみると、私はこの映画を「観た」というより、「絶賛される理由を探した」に近かったのかもしれません。期待値が高すぎると、鑑賞は体験ではなく、検証に近くなる。

笑うべきところで笑えたか、感動すべきところで感動できたか。本来なら、映画の中で何が起きているかに集中しているはずの時間が、自分の反応を確かめる時間に変わってしまう。画面を見ているようで、実際には自分の反応の方を見ている。これでは、どんな映画を観ても、素直に入り込むのは難しかったと思います。

タイムスリップもののお約束を先回りして見てしまった

侍が現代のテレビに驚いたり、ケーキを「高級菓子だ」と感動したりするシーン。こういう場面は、タイムスリップものではよくある展開で、私にはかなり馴染みのある型でした。現代文化とのギャップが笑いになる、という構成自体、このジャンルではほとんど定番といっていいものだと思います。

自分はこの手のジャンルを昔から観てきた方だと思います。だから、「そうなるよな」と、あらかじめ予想がついた状態で観てしまった。侍が撮影所に迷い込み、そのまま役者として馴染んでいく展開も、都合の良さは感じつつ、「まあそう転がるだろうな」という受け取り方をしていました。

これは、この映画の作りが悪いという話ではなく、自分がこの型を観慣れすぎている、という側面が大きいと思います。同じ展開を、初めてこのジャンルに触れる人が観れば、驚きとして受け取れるはずです。私の場合は、その驚きの手前で、先に答えを見つけてしまっていた。

少なくとも私は、先の展開を考えながら物語を追うタイプで、予想外の展開に強く惹かれる傾向があります。この傾向を、自分はHSS型HSPという気質とも重ねて考えることがあるのですが、それはあくまで自分の場合の話で、この映画自体の評価とは別のことです。

それでもラストと殺陣は良かった

ラストシーン、侍としての誇りを取り戻す展開は、素直に良かったと思います。クライマックスの殺陣も、担当した東映剣会の清家一斗さんの仕事だけあって、迫力と様式美があった。

主演の山口馬木也さんのコミカルな演技や、現代の風景に侍がいるという映像の面白さも、普通に魅力だと感じています。良い部分はちゃんとあった。ただ、そういう良かった部分は、観ている最中というより、観終わったあとに振り返って気づいたものが多い気がします。答え合わせをする目が外れて、少し距離ができてから、ようやく作品そのものが見えてきた感じです。それでも、映画全体を通して「これだ」と思うほどの一点が、自分の中には残らなかった、というだけのことです。

自分が映画に求めていたもの

私は、物語を観ながらいつも先の展開を考えてしまうタイプです。だからこそ、予想を裏切られる瞬間や、想定していなかった角度からの答えを、映画に求める傾向があります。展開が読めてしまうこと自体は、悪いことではないはずです。ただ、読めた展開がそのまま進んでいくと、途中から確認作業のようになってしまう。自分の場合は、そこに物足りなさを感じやすいんだと思います。

『侍タイムスリッパー』は、その意味では、私が先回りできてしまう範囲に、比較的収まっていた映画でした。同じ「時間もの」でも、『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』のような、仕掛けそのもので驚かせにくる作品の方に、自分は惹かれやすいのかもしれません。どちらが優れているという話ではなく、単に自分が反応しやすい仕掛けの種類が違う、というだけです。


MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない

誰かの絶賛と、自分の感想は一致しなくてもいい

『侍タイムスリッパー』が面白くない映画だった、とは思いません。ただ、私がこの映画に求めていたものとは、少し違ったんだと思います。

友人にとっての「今年一番」が、そのまま自分の「今年一番」になるとは限らない。それだけのことなんだと思います。

次に観るときは、誰かの絶賛をひとまず横に置いて、自分のペースで作品に入れたらいいと思う。今回は、期待値込みでこの映画を観た。それだけのことでした。

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