平野啓一郎の言葉を思い出す旅。占いが映した、母と私の「ちがい」と、言葉の持つ力

翻訳

先日、久しぶりに母と二人で横浜へ行きました。
記憶の街を歩く懐かしさと母との会話が、やわらかく混じり合うような一日でした。


目次

静かなインプット3行サマリ

  • 懐かしさと今がやわらかく重なる、母との横浜時間。
  • 占い、展望台、北京飯店…小さな出来事が心をほどく。
  • 母と私、それぞれの「らしさ」と言葉の重みを見つめ直す旅。

肉まんと、記憶のあんこ

久しぶりに来た横浜、中華街を歩いて、母と二人で、軽く点心を食べ、北京飯店で肉まんと桃まんを買った。

このお店には、私にとって少し特別な記憶がある。母は横浜育ちで、私は小さい頃、祖父母とよく横浜で過ごしていた。おじいちゃんが遊びに来る時は、決まって北京飯店の肉まんと桃まんをお土産に持ってきてくれた。

桃まんには白あんと黒あんの2種類がある。私は物心ついたときから黒あん派で、そのままずっと変わらずにいる。
味の好みというより、記憶の延長のような気がしている。

“未来は常に過去を変えている” ― 平野啓一郎『マチネの終わりに』

この言葉を思い出したのは、北京飯店の懐かしさと、あの頃と同じ味を手にしたとき。
過去と今が、やさしく交差していたから。


占いで映し出された、母と私のちがい

そのあと立ち寄ったのは、中華街の小さな占い店だった。
実は、母にとっては人生で初めての占いだったらしい。それだけで、母はどこか楽しそうだった。

占い師さんは、はじめにこう言った。

「私は未来を予言するわけではありませんよ」

その言葉に、私はすっと安心した。
未来が見えるなんて断言されるより、今の自分の傾向や流れを読み解いてもらえるほうが、私にはしっくりくる。

私について言われたのは、

  • やりたいことがはっきりしている
  • 人に任せるのが苦手
  • 将来、海外に住むくらいの勢いと可能性がある人

全部、どこか腑に落ちた。好奇心と独立心の強さ、そして「自分で納得して動きたい」気質は、確かにずっとある。

そして母について言われたのは、

「お母様は、アイドルの要素を持っていますね。
とても社交性が高くて、生涯現役で働くタイプ。
人のために何かをすることで、すごく活き活きする方です」

まさに、母そのものだった。
「休みがあると何をして良いか分からない、趣味がない人」

私はびっくりした、その感覚は私はなかったから。
いつも次の休みは何をするかを考えているし、すでに自分の中では決まっていたりもする、思いつきもあるし
予定はいつも未定で、その時思ったことで動くことができる。
余白が欲しいし、余白をわざわざ予定に入れてるレベルなのだ。

最近、母は「仕事を辞めようか」と何度か口にしていた。
でも私は、その後の気持ちが少し心配だった。
母は家にじっとしているタイプではない。
むしろ、外で人と関わることが、心の栄養になっているような人。

私は真逆だ。
ひとりでいる時間が、私にとっての回復であり、創造でもある。
だからこそ、母が人とつながることで元気になる姿に、私はときどき驚き、そしてすこしだけうらやましくもなる。

あの日の占いは、不思議なほど自然に、私たち親子の「ちがい」と「らしさ」を映してくれた。


和カフェで話した、最期のこと

展望台へ向かう前に立ち寄った和カフェ。私は和風モンブランとオリジナルブレンドティを頼んだ。

栗のやさしい甘さと香ばしいお茶の香り。
ふたりで並んで座っているだけで、どこか時間がゆるんでいく感じがした。

そんな中、話題は「自分の最期をどう迎えたいか」という話になった。
深刻な空気ではなかった。ただ、自然と流れのなかでそういう話題になった。

私は母に言った。

「“自分はこういうふうに最期を迎えたい”って言ってた人たちがね、
私たちのまわりにもいたじゃない?
そして、本当にその通りに亡くなってしまった人もいて……」

願いが叶うように、自分の理想の最期を語っていた人が、そのまま旅立つこともある。
でも一方で、「早く死にたい」と若い頃から繰り返していた人が、本当にその通りになってしまった例も、私はいくつか見てきた。

きっと本人も、「そんな日が本当に来るなんて」と思っていなかったと思う。
それでも、言葉というのは、未来とつながっていることがある。

言葉は、心と未来の間にかかる橋のようなもの。
だから私は、願うとしても、未来を軽んじるような言葉は、もう口にしないようにしたいと思った。

「本当にそうだよね」

母はやわらかく言った。

カフェでの会話は、やさしく静かな余韻を残してくれた。


展望台のエレベーターと、広がる景色

そのあと訪れたランドマークタワーの展望台。
ロープウェイが運休だったことで、偶然選んだルートだったけれど、結果的にはすごく良かった。

特に驚いたのは、エレベーターの安定感と速さ。
東京タワーやスカイツリーのそれとはまるで違って、吸い上げられるようにぐんぐん上がっていく。

後から調べたら、世界最速としてギネス記録を持っているらしい。
知らずに乗って、少し感動して、あとで理由が分かる。
そんな小さな発見が、なんだかうれしかった。

展望台から見た横浜の景色は、思っていたより楽しく広がっていて、面白かった。
新しくiPhoneを買ったばかりなので、早速写真を色々撮ってみた。


不思議とご縁のある場所

新宿と横浜。

このふたつの場所には、私は昔から、なぜかご縁がある。

新宿は、離れたと思っても、何だかんだでまた戻ってきてしまうような場所。
気づくと、いつもそこに立っている。

横浜は、ふと思い出したように訪れる場所。
おばあちゃんの家もまだあるし、母との思い出も、祖父母との記憶も、この街にたくさん残っている。

大人になっても、関わる人や出来事を通して、自然とまた足が向く。
そういう場所があることは、きっと人生にとって、ひとつの救いなのだと思う。

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