「どうして私だけ、こんなに感情の波が激しいんだろう」
「理由もないのに涙が出たり、落ち込んだりするのは、私が弱いから…?」
そんなふうに、自分でコントロールできない心と体の波に、ひとり静かに耐え、自分を責めてしまっていませんか。
この記事は、そんなあなたのためのものです。
映画『夜明けのすべて』は、PMS(月経前症候群)とパニック障害という、ままならない現実を抱えるふたりの物語。そしてこの記録は、その物語に触れた私が、自分自身の心と向き合った、ささやかな思索の記録です。
単なる映画レビューではありません。
この物語を通して見つけた、暗い夜の過ごし方と、ささやかな希望について、静かに言葉を紡いでいきたいと思います。
【作品情報とあらすじ】
・タイトル
夜明けのすべて
・公開年
2024年
・監督
三宅唱
・原作
瀬尾まいこ『夜明けのすべて』
・出演
松村北斗、上白石萌音、渋川清彦、芋生悠 ほか
【あらすじ】
月に一度のPMS(月経前症候群)で感情が爆発してしまう藤沢さん(上白石萌音)と、パニック障害を抱え、生きる気力を失いかけている山添くん(松村北斗)。 同じ職場で働くふたりは、お互いの事情を知り、どこかぎこちないながらも、少しずつ支え合うようになります。「助け合う」というほど大袈裟ではなく、「相手のために、自分にできる、ささやかな何か」を交換していく日々。それはやがて、お互いの人生にとって、かけがえのない“夜明け”の光となっていくのでした。
※この記事では、物語の核心に触れる大きなネタバレはありませんので、未見の方も安心してお読みください。
1|はじめに|少しだけ知っておきたいこと
この映画には、ふたりの登場人物が出てくる。
ひとりはPMS(月経前症候群)に悩む女性で、
もうひとりはパニック障害を抱える男性。
どちらも「病気」と言われることもあるけれど、
もっと身近で、もっと人の中にあるものだと思う。
PMSってなんだろう?
PMS(月経前症候群)は、月経が始まる前の数日から1週間くらいの間に、
気分の浮き沈みやイライラ、落ち込み、不安感、体のだるさや眠気など――
心と体にさまざまな変化が起こる状態のこと。
誰にでも起こるわけではなく、
症状の重さも人によってまったく違う。
「理由もなく感情が荒れる自分」を責めてしまうこともあるけど、
ホルモンの影響で、自分の意志とはまったく関係なく起きてしまうもの。
パニック障害って?
一方でパニック障害は、ある日突然、
動悸や息苦しさ、めまい、強い不安感が襲ってくる状態。
身体にはっきりと症状が出るから、外見ではわからないことも多いけれど、
本人にとっては“このまま死んでしまうかもしれない”と感じるほどつらいこともある。
またいつ起こるかわからない、という不安が日常に影を落としてしまうこともあって、
「何が怖いのか分からないけど怖い」――そういう状態が続くこともある。
このふたつに共通しているのは、
“自分でコントロールできないのに、まわりからは理解されづらい”ということ。
映画『夜明けのすべて』は、そういうふたりの人物が出会い、
「わかろうとする」ことで少しずつ日常をやわらかくしていく話だった。
2|「なんで私だけ?」コントロールできない自分を責めてしまうあなたへ
“自分のことなんだから、自分でコントロールできるでしょ?”
きっと、そう思う人は多いと思う。
いや、実際にそう言われたことがある人もいるかもしれないし、
何より先に、そう自分に向かって責めてしまうのが、いちばんつらいことなんだと思う。
この映画を観ながら、私も思った。
「あ、なんか…わかるな」って。
完全に同じ経験があるわけじゃないけれど、
女性だったらきっと、少しは思い当たるところがあるんじゃないかなと思った。
理由がないのに、やたらイライラしてしまう日。
自分でも不思議なくらい涙が出たり、落ち込んだりする日。
頭では「大したことない」ってわかってるのに、
心がどうしてもついてこない、あの感覚。
私は最近、食事を少しずつ整えるようになって、
それが気持ちにも影響している気がしてる。
前よりも、感情の波が穏やかになってるような気がする。
(それはまた別の話だけど、こういうのってやっぱり全部つながってると思う。)
この映画は、そんなふうに“完全には重ならないけど、どこか少し引っかかる”人たちの心にも、
そっと手を添えてくれるようなやさしさがある。
3|すぐに仲良くなれなくても、助け合うことで近づけることがある
この映画に出てくるふたりは、最初から気が合うわけでも、
なんでも話し合えるわけでもない。
むしろ、どこか“苦手”だと思っていた相手。
でも、だからこそ成立した関係なのかもしれない。
最初から「この人、好き」って思える関係よりも、
ちょっと距離があったり、警戒していた相手とのあいだに生まれる信頼って、
もっと深くて、静かに積み上がっていくものだと思う。
私自身も、けっこう警戒心が強いほうだと思っている。
本音で話すには時間がかかるし、心を開くまでに何段階もある。
でも、見た目やふるまいではそう見えないらしくて、
「社交的だよね」「すぐ友達できそう」ってよく言われる。
おしゃべりは好き。人と話すのも好き。
でもそれと“心を預ける”のは、まったく別の話で、
たぶんそれを分かってくれる人って、そんなに多くない気がしてる。
この映画のふたりは、そんな“距離感”を言葉にせずに尊重し合っていた。
それが、とても気持ちよかった。
理解しようとするけれど、踏み込まない。
近づこうとするけれど、急がない。
こういう関係って、もしかしたらすごく理想なのかもしれないな、と思った。
4|「全部、もうどうでもいい」と思うときに
ああ、なんか全部面倒だな。
誰とも話したくないし、何も考えたくないし、
できることなら今日がなかったことになってほしい――
そんな日、誰にでもあると思う。
たいていは、寝たり、おいしいものを食べたりして、
少しずつ整って、また明日を迎えられるようになる。
でも、「全部壊れてしまっても構わない」って思うほど、
コントロールできなくなる瞬間があったら。
それはきっと、“こころのサイン”なのかもしれない。
この映画を観て感じたのは、
「病気」とか「症状」とか、そういう言葉よりも先に、
“ほんとうは誰にでも、波がある”っていう視点だった。
無理にポジティブになる必要はないし、
誰かの理解を得られなくても、ただそばにいてもらえるだけで救われることもある。
そういうシーンが、この映画にはいくつもあった。
私も最近、定期的に自然に触れる時間が、メンタルや体の調子に繋がってる気がしている。
緑の中を歩いたり、風を感じたりするだけで、少しだけ呼吸が深くなる気がする。
ひとりで登山――実はけっこう興味ある。笑
自然の中にいると、うまく言えない感情やざわざわが、
ほんの少しだけ解けていく気がするから。
Some things are not meant to be fixed, only gently held.
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