二人の役割は、二人で作っている

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疲れたときに頼る。分からないことを聞く。決められないときに相談する。

そういうことができる相手がいるのは、人間関係の大切な部分だと思う。
普段は自分でできることでも、この人の前なら、今日は頑張らなくてもいい、と思えることがある。

それは弱さというより、安心できる関係だからこそ、できることなのだと思う。

目次

「頼っている」と「できない」は同じではない

いつも道を調べてくれる人がいるから任せている。家電に詳しい人がいるから設定をお願いしている。そういう状態は、自分ではできないことを意味するとは限らない。できるけれど、任せている。できるけれど、今日は頼りたい。自分でも考えられるけれど、相談したい。頼るという行為から、すぐに「私には無理」「私は一人ではできない」という評価に飛んでしまわないことが、案外大切なのだと思う。

やらなくていいことは、やらなくなる

一方で、誰かがいつもやってくれる環境についても考えてみたい。相手がいつも調べてくれると、自分は調べなくなる。相手がいつも決めてくれると、自分は決めなくなる。相手がいつも問題を解決してくれると、自分で解決する機会が減っていく。これは、怠けているという意味ではない。人は、自分がやる必要のないことを、自然に他者へ任せていくものなのだと思う。

ただ、その状態が長く続くと、「普段やっていない」が「私は苦手」になり、さらに「私はできない」へと変化していくことがある。最初は、それほど大きな能力差はなかったかもしれない。それでも、片方が少し得意だったから毎回やるようになり、得意な人は経験を積み、もう一人は経験を積まないまま時間が過ぎる。数年後には、本当に大きな差ができていることがある。その差の一部は、最初から存在していた性格や能力ではなく、誰がそれを担当してきたかによって、後から作られたものなのかもしれない。

頼られる人も、関係の中で作られていく

弱い側の話だけでは、片手落ちになる。誰かから頼られると、考える、判断する、問題を解決する、という経験が増えていく。すると、その人は実際に判断や解決が上手くなっていく。周囲からも「しっかりしている」「頼りになる」と言われるようになり、本人も、自分は頼られる側なんだ、と思うようになる。弱い人が強い人を必要とするだけでなく、頼られる経験そのものが、相手を強い人に育てていく面もあるのだと思う。

二人が、お互いの役割を強化していく

一方が不安になる。もう一方が考える。一方が安心する。次もその人を頼る。頼られた側は、さらに問題解決に慣れていく。頼っている側は、この人は強いと感じる。頼られている側も、自分が支えなければ、と思うようになる。すると、さらに安心して頼るようになる。

こうして、一方は弱い人、もう一方は強い人という役割が、少しずつ作られていく。どちらか一方だけが、この関係を作っているわけではない。二人の行動が、お互いの役割を補強し合っている。性格だと思っていたものの一部が、実は関係性の中で作られている場合があるのだと思う。

支える側にも、その役割を続ける理由がある

これは、弱い側が強い側に依存している、という一方向の話ではないと思う。頼られると嬉しい。必要とされると安心する。自分が役に立っていると感じる。自分がやったほうが早い。相手に失敗してほしくない。そういう理由から、本来なら相手が自分で経験できることまで、先回りしてやってしまうことがある。弱い人が強い人を必要とするだけでなく、強い人もまた、強い人でいられる関係を必要としていることがあるのかもしれない。すべての関係がそうだとは言えないけれど、そういう可能性はあると思う。

助けることは、悪いことではない。ただ、相手が困る前に助ける、失敗しそうだから代わりにやる、ということが続くと、相手が試行錯誤する機会そのものを、いつの間にか奪ってしまうこともある。助けることと、相手ができるようになることは、必ずしも同じ方向を向いているとは限らない。

大切なのは、役割を移動できること

この関係を、誰にも頼らないほうがいい、という結論にはしたくない。今日は私が頼る。明日はあなたが頼る。これは私が得意だからやる。これはあなたが得意だからお願いする。普段は自分でできるけれど、今日は疲れているからお願いする。そうやって、強い側と弱い側を固定しないでいられる関係について考えたい。

毎回きっちり50:50である必要はない。大事なのは、その時々によって、支える側と支えられる側を移動できることだ。「今日はできない」と言えるのと同じように、「今日は自分でやってみる」とも言えること。それがあるだけで、関係の重さは、ずいぶん違ってくる気がする。

3行サマリ

・頼るという行為は、「できない」ことをそのまま意味するわけではない
・強い人と弱い人という役割は、二人の関係の中で少しずつ作られていくことがある
・大切なのは頼らないことではなく、支える側と支えられる側を行き来できること

ある夜のこと

今日も、何かを決めるとき、いつものように相手に相談した。自分でも考えられることだったな、とあとになって気づいた。それでも、頼った時間そのものは、心地よかった。私は弱いからこの人が必要なんだ、と考える前に、私はこの人を信頼しているから、この人の前では弱くいられるのかもしれない、と考えてみる。一人でもできる。でも、二人だから頼る。そのくらい自由に行き来できる関係なら、そもそも強い人と弱い人に分ける必要すら、ないのかもしれない。

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